岸まつえ 平和と希望のまち新宿をつくる会

岸まつえ図書室

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岸松江@つぶやきタマゴ 連載・20

従軍「慰安婦」問題「強制された」ことの立証責任

月刊女性&運動 2013・2

従軍「慰安婦」問題について、「強制があった証拠はない、だから事実ではない」という主張は、強姦罪の犯人が、暴行で重傷を負い告訴した被害者に対し、強姦されたというなら強制されたという証拠を出せといっているのと同じくらい理不尽なものです。

強姦ではなく女性が自ら性行為に応じたというなら、性行為が「合意」によるものであったことは、加害者側が主張立証すべきことだからです。

これまでの数々の「慰安婦」裁判で日本の裁判所は、元「慰安婦」たち(多くは当時10代でした!)の証言やその体に残る暴行・拷間の傷跡等により、暴行や欺罔により女性たちを連行し「慰安婦」としたことは、軍が関与した非人道的蛮行だと認定しています。日本政府も元軍人や関係者への調査を行い、「河野談話」で旧日本軍が、本人たちの意思に反して集められた多数の女性の名誉と尊厳を深く傷つけたことを認めています。戦後長年「慰安婦」だったことをひた隠しにしてきた被害女性たちが、自分の名誉が危険にさらされることを覚悟で名乗り出た決意と証言の重みを受けとめるなら、その歴史の真実を消し去ることはできません。

それでも強制連行がでっち上げだというなら、それを立証すべきはでっち上げだと主張している側にあります。にもかかわらず、「証拠を出してみろ」というのは、全くの筋違いなのです。

強制を否定する人たちは、当時朝鮮で「慰安婦」募集の広告がだされ、そこに高額の報酬が記載されているなどと主張しています。強姦犯人が性産業の勧誘広告を示しても、特定の被害女性の「合意」を立証したことにはなりません。そのくらい彼らの主張は荒唐無稽なのです。こんな無茶苦茶な主張は、歴史的事実への無反省ぶりと女性の尊厳への無理解からくるものだと思います。

ところで、昨年私が高知市を訪間したとき、地元の新間で、太平洋戦争時、海軍主計中尉だった中曽根康弘元首相が、1942年にボルネオ島に「土人女性を集め慰安所を開設」したとの記録が防衛省防衛研究所戦史研究センターに保存されていたことを知りました。中曽根氏は自分の回顧録でも慰安所設置を自慢げに書いているそうです。慰安所を設営した軍人が、何の反省もないまま戦後日本の総理大臣まで務めたことに私は驚きもし落胆したものでした。

「強制」連行を否定するのであれば、中曽根元首相に対し、被害女性たちが「慰安婦」となることに「合意」していた証拠を出すなり証言をするよう求めてほしいものです。

(弁護士)

※「つぶやきタマゴ」は小さな「つぶやき」を温めて新しい何かが生まれたらいいなという思いをタイトルに込めました。

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