岸まつえ 平和と希望のまち新宿をつくる会

岸まつえ図書室

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岸松江@つぶやきタマゴ 連載・13

それぞれの居場所

月刊女性&運動2012・6

働く人たちの相談にのることが多いです。近年増えているのが職場のパワーハラスメントに関するものです。しかも明らかにひどい暴行や暴言というわけではなく、過重な仕事の押しつけあるいは巧妙な仕事外し、ささいなミスの指摘や言葉による人格侵害など、立証の判断が難しいケースが増えています。

ある労働者は、東日本大震災でお母さんが行方不明になり後に遺体で発見され、埋葬のために休みを取りたいと申し出ると「(休むと)みんなに迷惑かかるだろ」と言われました。その会社では、残業代不払いや売り上げが下がると従業員に罰金を課すなど、違法が横行していました。

別の女性は、うつ病で休職し復職後、会社の産業医から「休職は退職の猶予制度みたいなもの」などと暗に退職をすすめられ、一気にうつ病を悪化させてしまいました。

職場は、第一に生活の糧を得る場でもありますが、労働者が1日の多くの時間を過こすところでもあり、仕事を通じて社会とつながる大切な「居場所」だと思います。

その「居場所」がいたたまれず、自分の身のおきどころがなくなってしまい、安心して働くことができなくなることはだれにとっても辛いことです。ところが、日本の多くの職場で働く人の「居場所」が奪われているような気がしてなりません。

ところで私は、草花を育てるのが好きで、いろんな植物を育てることに挑戦しています。草花によって、太陽の光のなかでたくさんの花を咲かせるものや、強い光では葉焼けして元気がなくなり、むしろ日陰の方が生きいきしてくるものなど様々です。その植物の様子を見ながら置き場所を試して、いちばん適切な「居場所」を見つけると、見違えるように大きく成長することに気づきました。

人も、同じように自分が安心してのびのびできる「居場所」があれば、だれもがその能力を発揮できると思うのです。そのためには余裕が必要ですし、各人が「居場所」を見つけるための経験や訓練を積む時間と、成長を支える信頼関係が不可欠だと思います。

短時間で目に見える成果をあげることだけに心を奪われ、働く人の「居場所」をなくしてしまう職場には、持続的発展は望めないことに、企業家は気づくべきだと思います。

(弁護士)

※「つぶやきタマゴ」は小さな「つぶやき」を温めて新しい何かが生まれたらいいなという思いをタイトルに込めました。

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